2008年夏 槍ヶ岳〜前穂高岳縦走(テント泊)


記:青田哲郎
行程概略
8月6日 22:00祖師谷出発 沢渡にて仮眠
8月7日 6:00上高地発〜横尾8:10〜槍沢ロッジ9:40〜ババ平10:35〜大曲11:00〜天狗原分岐12:00〜
      殺生ヒュッテ分岐13:44〜槍天場14:40
8月8日 槍天場4:30〜大喰岳5:00〜南岳6:40〜大キレットA沢のコル8:40〜北穂小屋10:00〜涸沢岳13:00〜
      奥穂小屋13:30
8月9日 奥穂小屋天場5:30〜奥穂頂上6:00〜紀美子平7:33〜前穂高岳頂上8:00〜岳沢小屋跡11:00〜
      上高地バスターミナル12:30
行動記録
8月7日
 朝、乗り合いタクシーの客引きに合い、4人の登山客が1台のタクシーにて上高地に向かう。バスと同じ料金なので時間を得した感じだ。
 天気は良い! 良い日を狙って休暇をとったのだから良くなくては困る。例の日本庭園ばりだが、上高地からのくそ長い道を歩き始める。とにかく暑い! 水の消費スピードがやたら速い。初めの予定だとババ平キャンプ場で今日は終わりにする予定だが、まだ10時30分だ! 幾らなんでも早すぎる。槍まで行くことに決める。沢筋の開けた道にでたあたりから涼しい風が吹き上がり、水場も多く、思ったより楽に上がれてくる。坊主岩下に出ると突然槍が見えてきた。ウォーッとうなり声を上げ、疲れた体にアドレナリンが出てくるのが分かる。最後のつづら折れの急登を終え何とか槍に到着する。
槍ヶ岳が見えた!

 テントの受付をすると大きな木で出来た表示板を受け取る。テント場は狭く数が少ないので遅い到着は要注意。天場は大食岳側で槍は穂先しか見えない。眼下には殺生ヒュッテ、前方に常念、東鎌尾根が見える。ガスが早く流れる中、笠ケ岳方面などで雷鳴がすごい! こちらに来ない事を願うだけだ。
 夜半に空を見上げると見事な星空で久しぶりに天ノ川を見る事が出来た。明日も大丈夫そうだ!
8月8日
 今日は大キレット越えと北穂から涸沢岳の渋い縦走が控えているので暗い内からの行動開始とする。槍の頂上にはヘッドライトの列が出来ている、スルーと即断する。南岳まではのんびりとした尾根が続く。大キレットはネットで騒ぐほど恐ろしくは無いと思う。個人的には表妙義山の方がよっぽど怖かったような気がする。但しこの逆コースは下りが怖そうだ。でも、これはいつも感ずることで結局、どちら側から来ても同じようなことなのだろうと思う。
南岳小屋と穂高 大キレット注意書き
 大キレットと名が付くようにここはスケールが大きく、とにかく長い! 登りは、両手はもちろん使いっぱなしで膝は最大角まで上げることが多く膝を何度も岩にぶつけてしまう。途中佐賀から来たNさんと知り合いにな前後しながら写真を撮ってあげたりする。A沢のコルから浮石の多い、いやらしい急登を終え、やっと北穂小屋でしばし休憩をとる。

常念岳と涸沢 遠くに北穂、キレット核心部


             長谷川ピーク
A沢のコルと長谷川ピーク

実はこれから先も結構大変なのである。涸沢岳までミニキレットもどきを慎重に縦走する。涸沢岳が見えているがなかなか着かない。最後の長い鎖場を登り頂上手前の稜線に飛び出る。頂上は結構な数の人間がいる。奥穂小屋の赤い屋根を見下ろしながら緊張の縦走を終えた喜びと体から染み出るような疲労感とともに小屋にゆっくりと歩いて行った。
奥穂小屋より北尾根と入道雲 奥穂からの槍
 ここのテント場も狭く、槍と違って場所は早い者順だ。お隣のKさんと話が弾む。彼は何と大キレットを南岳、北穂間を往復してきたという! 思わず「物好きだね!」と失礼な事を言ってしまった。
 夏山らしい素晴らしい景色を楽しみながら一人ビールを飲む。まさに種田山頭火の「もりもりもりあがる雲・・・」を彷彿とさせる入道雲が素晴らしく面白い! 飽きずに見入ってしまった。そのうち小屋前のテラスで盛り上がる韓国登山ツァー客達の大宴会の音を聞きながら深い眠りについていた。
8月9日
 3日間で一番良い天気だ。渋滞気味の取り付き鉄梯子を上り、ちょっとするとすぐ奥穂頂上に着く。今度行こうとするジャンダルム、西穂方向がすっきりと見えている。「ジャンまで行ってこようかな?」とチラッと頭をよぎるが今度のお楽しみの為に取っておくことにする。前穂に向かう途中でお隣テントのK氏と一緒になる。これから前穂頂上、上高地までと、どちらからとも無く同行することになる。
ジャンダルム 前穂から奥又白池と梓川
 前穂の頂上からの眺めはまた素晴らしく、澄んだ空気の中で思う存分に景色を楽しむ事が出来た。紀美子平から急坂を慎重にくだり今は土台だけになってしまった岳沢ヒュッテ跡に降りつく。その頃から奥穂の方に雲が広がり始め1発すごい雷鳴が響き渡る。やっぱり夏山の天気は午前中しか持たないのかな? 上高地まで30分のところで結構な雨となり、またまたバスターミナルに濡れそぼって着いた。同行したKさん、Mさんと3人で写真を撮る。
 登山もまた色んな出会いのある「旅」なのかも知れない。はるか昔の山岳部部歌を思い出す。「守れ権現、我らが旅を〜明日の旅路が気にかかる〜」  もう次の旅のことを考えている。

後記
 大キレット及び北穂、涸沢、前穂間の縦走路では多くの人が命を落としている。今夏でも何人かの人が遭難されていると報道で知った。山は高さに関係なくただ一歩つまずけば大変なことになるのは山に来る人は皆知っているはずなのだが! 今回結構なスピードで大キレットを通過しているかなりの年配者を見かけたが、どんな傾斜の岩場でもストックを突いて降りてくる。そのストックが外れたらと思うと・・・! 安全を祈るしかない。
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